

「どれを選ぶか」の前に決めることが3つあります
この記事を読んでいる方は、ポータブルトイレを導入すること自体はもう決まっていて、「で、どれを選べばいいのか」で止まっている段階だと思います。私は福祉用具専門相談員として17年、店頭とお宅の両方でポータブルトイレのご相談を受けてきました。その経験から先にお伝えしたいのは、カタログの機能一覧から入ると迷子になる、ということです。
ポータブルトイレは、トイレという名前の付いた「毎日使う家具」です。部屋のどこに置くのか。ベッドからどう移るのか。使ったあと、誰が片付けるのか。この3つが決まると、合う種類と機能はほとんど決まります。逆に、この3つを決めずに選ぶと、届いてから「置けない」「移れない」「片付けが続かない」のどれかにぶつかります。
ポータブルトイレは、置く場所・移り方・片付ける人まで決めて選びます。
3つと聞くと手間に思えるかもしれませんが、どれも、いつもの生活を思い浮かべれば答えられることばかりです。この記事では、置く場所(第2章)→移り方(第3章)→片付ける人(第4章)の順に決めていき、第5章でその答えを種類に当てはめます。第6章で介護保険の使い方を整理し、第7章で条件別の候補を紹介します。まずは下の図で全体をつかんでください。

置く場所を決める
最初に決めるのは、置く場所です。TOCHIが対応した相談では、ベッドの足元に置くケースが多くありました。ただし、「足元が正解」という意味ではありません。ご本人・ご家族の希望を起点に、そこまで移動する通路と、介助が要る場合に介助する人が立てるスペースを確保できるかを確認します。同じ6畳の部屋でも、ベッドの向きと扉の位置で、置ける場所は変わります。
置く場所を考えるときは、夜の様子も思い浮かべてください。ポータブルトイレがいちばん働くのは、夜中にトイレまで歩くのがつらい時間帯です。寝ている位置から起き上がって、何歩で着くか。手元の照明はあるか。この距離感で、置き場所の候補は絞られていきます。
介助がある場合は、立ち位置まで含めて考えます。ベッドとポータブルトイレの間に、人がひとり立てるか。車いすを使う日があるなら、その置き場所も要ります。図面の上で考えるより、実際にその場に立ってみるのが確実です。
場所の候補が決まったら、そこに本体が収まるかを測ります。TOCHIが対応した範囲では、見落としが起きやすかったのは本体の横幅でした。奥行きや高さは目で見当がつきやすいのに対して、横幅は「便座の幅」のイメージで見てしまい、ひじ掛けを含めた本体全体の幅を測っていなかった、というケースです。高さの調整範囲や背もたれの形状は商品ごとに違いますから、候補を絞ってから個別に確認します。
あわせて決めたいのが、「常設するか、使うときだけ出すか」です。夜も昼もその場所に置いておくのか、来客のときは片付けたいのか、日中は別の部屋で過ごすのか。ここは暮らし方そのもので、答えはご家庭ごとに違います。常設なら部屋になじむ見た目が、出し入れするなら軽さや折りたたみやすさが効いてきます。この分かれ道は、第5章の種類選びにつながります。
移り方を決める
置く場所の次は、移り方です。ベッドからポータブルトイレへ、どうやって移るのか。立って移るのか、腰を浮かせて横に移るのか、介助があるのか。ここは、商品選びにいちばん直結する判断です。
まず、今の動作を見ます。ご本人にいつもの起き上がり方をしてもらい、立ち上がって一、二歩進めるなら、ベッドの足元や横に置いた標準的なタイプが候補になります。日中は立てても、起きたばかりの体では動きが変わることがあります。確かめるなら、実際に使う時間帯に近い状態で見るのが確実です。
今の動作だけで選ぶと、状態が変わったときに買い直しが必要になることがあります。立ちにくくなったときの移り方まで確認します。
たとえば、今は立って移れていても、立ちにくくなったときは、腰を浮かせて横にずれるような移り方に変わっていくことがあります。横からの移乗を考える場合は、ベッドとの高低差を小さくできるか——つまり、座面の高さをどの範囲で調整できるかを確認します。

ここで出てくるのが、ひじ掛けの形です。標準的な固定式のひじ掛けは、立ち座りのときに手をついて支えられます。一方、跳ね上げ式のひじ掛けは、ひじ掛けを上げて、横への通り道をつくれます。
跳ね上げ式の肘掛けは、肘掛けを避けてベッド側から移りたいときの選択肢です。本人の動作、介助方法、ベッドとの高さを見て選びます。
跳ね上げ式なら誰でも横に移れる、というものではありません。ご本人の腕の力や座る位置、介助する方の立ち位置、ベッドとポータブルトイレの高さの関係——それらがそろって初めて働く機能です。介助で移る場合は、介助する方がどちら側に立つかで、ひじ掛けのどちら側を空けたいかも変わります。今すぐ要らなくても、この先の移り方の変化まで見据えるなら、候補に入れておく価値があります。
判断に迷うときは、ひとりで決めずに、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員、リハビリの専門職に動作を見てもらってください。移り方の見極めは、カタログではなく、聞き取りと実際の動作確認で行う領域です。
片付ける人を決める
3つ目の判断は、使ったあとの処理です。ポータブルトイレは、使うたびにバケツの中身を処理する道具です。選ぶ段階でここを飛ばすと、置けて、移れても、使い続けることがむずかしくなります。
置けるかだけでは足りません。使用後の処理を本人ができるか、難しい場合は誰が、いつ担うかまで先に決めます。
まず、ご本人が自分で処理できるかを確認します。バケツを外して、トイレまで運んで、流して、洗って戻す——この一連の動作ができるなら、選び方はぐっと自由になります。むずかしい場合は、ご家族や介護サービスの誰が、いつ担うかを決めます。
介護サービスに頼る場合は、確認がひとつ増えます。ヘルパーさんが毎回処理できるとは限らないためです。訪問の時間帯や回数、サービス内容として処理をお願いできるか——ケアマネジャーを通じて、先に確かめておいてください。「朝と夕方は家族、日中の1回はヘルパーさん」のように、時間で分担が決まると続けやすくなります。
🟩 TOCHIの判断ポイント①|片付ける人の決め方
まず見る:使用後の処理を、本人が自分でできるか
なぜ:ポータブルトイレは、使うたびに処理が発生する道具だから
どうする:むずかしい場合は、家族や介護サービスの誰が、いつ担うかを決め、サービス内容や訪問時間も確認する
においの対策も、処理の話とひとつながりです。ポイントは、用便後どれだけ早く処理できるか。時間が経つほど、においは部屋に残ります。処理までに時間が空く場合は、バケツにあらかじめ消臭液を入れておく使い方があります。水と一緒に入れておくことで、次の処理までのにおいを抑えやすくなります。
消臭液や処理袋などの消耗品は、使い続ける前提で費用がかかります。どの消耗品がどのくらいのペースで要るのかも、選ぶ前に見ておくと、あとで慌てません。なお、処理の負担そのものを減らす機能を持つ機種もあります(排泄物をフィルムで密封するタイプ)。価格帯が大きく変わるため、第7章の最後で別枠として紹介します。
3つの判断を、種類に当てはめる
ここまでの3つの判断を持って、種類を見に行きます。ポータブルトイレは大きく、木製(家具調)・樹脂製・折りたたみ型の3つに分かれます。種類の説明を先に置かなかったのは、種類の違いが「3つの判断のどれを優先するか」で選ばれるものだからです。
| 種類 | 主な特徴 | 3つの判断との相性 |
|---|---|---|
| 木製(家具調) | 家具のような見た目で部屋になじむ。重さがあり、どっしり据えて使う。動かす機会が多い使い方には不向き | 「常設する」「部屋の見た目を大切にしたい」に合う |
| 樹脂製 | 木製より軽めで扱いやすく、種類がもっとも多い。座面高さの調整や便座の仕様の選択肢が広い | 「置く場所や移り方に合わせて細かく選びたい」に合う |
| 折りたたみ型 | 使うときだけ出して、使わないときはしまえる。軽く、持ち運びやすい | 「常設しない」「来客時は片付けたい」に合う |
答え合わせをしてみましょう。常設して部屋になじませたいなら、木製。ベッドまわりに置いて、移り方や高さに細かく合わせたいなら、樹脂製。使うときだけ出したいなら、折りたたみ型。置く場所・移り方・片付ける人の3つが決まっていれば、種類はほとんど自動的に決まります。
きれいに一つへ決まらないご家庭も、もちろんあります。そのときは、3つの判断のうち「どれが欠けるといちばん困るか」から順位を付けると、決めやすくなります。
便座の仕様は、種類の違いではなく、各商品の選択肢です。同じ機種でも、標準便座のほかに、座り心地をやわらげるソフト(柔らか)便座、冬場の冷たさを抑える暖房(保温)便座、脱臭機能付きなどが用意されていることがあります。種類を決めてから、便座の仕様を商品ごとに確認する——この順番で見れば迷いません。
実物を見られる場合は、座ってみるのがいちばんです。数字では分からない座り心地や、座ったときの落ち着きが、その場で分かります。そして、どの種類でも、第2章で書いた本体の横幅と、第3章で書いた座面高さの調整範囲は商品ごとに違います。種類で絞ったあと、この2つの数字を最後にもう一度、商品ごとに確認してください。
介護保険を使うか、自費で買うか
最後の分かれ道は、お金と手続きの話です。
対象となるポータブルトイレは、介護保険の特定福祉用具販売「腰掛便座」として購入費支給の対象です。購入前に、指定事業者・残っている限度額・自治体の手続きを確認してください。

押さえておく点は5つです。①対象は、特定福祉用具販売の「腰掛便座」に当たる商品であること。②支給限度基準額は、4月1日から翌年3月31日までの年度で10万円であること。③この枠は、シャワーチェアなどの入浴補助用具と同じ年度枠を使うこと。④自己負担は所得に応じて1〜3割で、10万円を超えた分は全額自己負担になること。⑤指定の販売事業者での購入か、申請や支払いの方法はどうなっているかを、購入前に確認すること。
ここで誤解しやすいのが、10万円の意味です。10万円は受け取れる金額ではなく、介護保険の支給計算に使う購入費の上限です。また、入浴用品と同じ年度の枠を使う可能性があるため、近い時期に両方を検討するなら、合計額と申請方法を先に確認してください。たとえば、同じ年度にすでにシャワーチェアを購入している場合は、残っている枠を見てから決める、という順番になります。制度の共通の枠組みは介護のお風呂、何を使えばいい?|入浴用品の選び方と介護保険にもまとめています。
🕵️ TOCHIの現場メモ|すぐ必要な方へ
私が対応した範囲では、退院直後など、すぐ必要なため自費で購入するケースもありました。介護保険を使う可能性がある場合は、先に購入せず、ケアマネジャー・福祉用具専門相談員・お住まいの自治体へ確認してください。
条件別に選ぶ+まとめ
ここからは、3つの判断の組み合わせ別に、候補として挙げやすい4点を紹介します。おすすめ順ではありません。合う条件が違うだけです。
介護保険を使う場合は、通販で注文する前に、販売元が指定事業者か、自治体の支給条件を満たすかを確認してください。
1. 狭い場所に置く → 安寿 ポータブルトイレ ジャスピタ
幅49.5cmと、今回の4点でいちばんスリムな樹脂製です。座面の高さは33〜45cmを13段階で調整できます。便座は標準・ソフト・暖房と、それぞれ脱臭付きが選べます。置く場所の幅がぎりぎりの部屋で、候補の起点になる1台です。
2. 将来の横移乗も考える → 安寿 FX-CPはねあげ
ひじ掛けが跳ね上げ式の樹脂製です。座面の高さは33〜49cmで調整できます。第3章で書いた「肘掛けを避けてベッド側から移りたいとき」の選択肢で、この先の移り方の変化まで見据えたい方に向きます。
3. 部屋に常設する → 安寿 家具調トイレ セレクトR ノーマル
天然木(ラバーウッド)の家具調タイプで、キャスターを標準装備しています。座面の高さは35〜50cm、ひじ掛けの高さも18〜27cmで調整できます。便座は標準・ソフト・暖房と、それぞれ快適脱臭付きから選べます。部屋に常設して、家具として置きたい場合の候補です。
4. 必要なときだけ出す → イーストアイ すま~いるコンパクト
約6.1kgと軽いアルミ製で、折りたたむと奥行20cmになります。座面の高さは39〜49cmを2.5cm刻みの5段階で調整でき、座面を付け替えると、シャワーベンチ・ポータブルトイレ・トイレチェアの1台3役として使えます。常設せず、使うときだけ出す使い方に合います。
後処理の負担を減らしたい場合:安寿 FX-30 自動ラップ「らくゾウくん」
ここまでの4点とは別に、後処理の負担を減らす機能を優先する場合の選択肢です。排泄物をフィルムで密封するタイプで、バケツを洗う処理の形が変わります。ただし、検討の前に次の6点を確認してください。
- メーカー希望価格131,500円〜(税込144,650円〜)の、高価格帯の例外枠であること
- 介護保険の10万円枠を超えること
- 超過分は全額自己負担になること
- 専用フィルムなどの消耗品が継続して必要なこと
- 移乗のしやすさや設置条件は、別に確認が要ること
- 導入前に、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員への相談を前提にすること
仕様や詳細は、メーカーの公式ページで確認できます:安寿 ポータブルトイレ FX-30 自動ラップ(アロン化成公式)




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