排泄・トイレ用品の選び方|道具の前に、困っている場面から考える

排泄・トイレ用品の選び方。道具の前に、困っている場面から考える 排泄・トイレ用品
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「大人用おむつは、どれを買えばいいですか」——店頭でよくいただくご相談です。ただ、私がその場ですぐ商品をお出しすることは、あまりありません。最初にお聞きするのは、今どんなことでお困りなのか、という話です。同じ言葉のご相談でも、伺ってみると状況はそれぞれで、状況によってお出しするものが変わるからです。

この記事は、商品を勧める記事ではありません。排泄の困りごとを「どこで困っているか」で分け、そこから必要な道具にたどり着くまでの順番をまとめます。それぞれの道具の詳しい選び方は、別の記事へ進んでいただけるようにしています。
※この記事の執筆・確認:福祉グッズ探偵TOCHI(福祉用具専門相談員として17年、おむつフィッター2級)

🕵️ 忙しい方へ

排泄の道具は、商品名から選ぼうとすると迷います。最初に分けるのは「どこで困っているか」。①トイレまでの道のりが不安 ②夜だけ間に合わない ③漏れる ④後始末の負担——場面が分かれると、次に確認する先も決まります。この記事は商品を紹介しない「排泄の困りごとの地図」です。近い場面の章から、詳しい記事へ進んでください。

「おむつはどれがいい」と聞かれたとき、私が先にすること

店頭でこのご相談をいただいたとき、私が最初にするのは、商品棚へ案内することではなく、今の利用者さんの状況を聞くことです。状況によって、お出しするものが変わるからです。

聞き返すと、答えはたいてい具体的に返ってきます。「夜にトイレが間に合わないから、おむつを考えている」。あるいは、「おむつを買ってみたけれど、合わないからどうしたらいいか」。同じ「おむつ」という言葉から始まったご相談でも、前者で困っているのは夜という時間帯、後者で困っているのは今使っている組み合わせです。困っている場所が違えば、確認するところも変わります。

福祉用具の相談を17年続けてきて、排泄は、いちばん切り出しにくいご相談だと感じています。だからこそ、お店にご相談に来られた時点で、すでにしばらくお困りだったことが多いのです。今なにをお使いか、いつからか、どなたが替えていらっしゃるか——順番に伺っていくと、困りごとの形が見えてきます。おむつフィッターの講習で学んだことも、結局はこの「聞く順番」を支えるためのものでした。

実際に、聞き返した結果、おむつではなくポータブルトイレをご案内したこともあります。夜だけ間に合わないというお話で、ベッドから起き上がって歩く力は残っている——それなら、寝床のそばに便座があれば済むかもしれない、という流れです。最初から商品名で考えていたら、この道筋は出てきませんでした。

むぎ
むぎ探偵TOCHI、聞かれたのはおむつのことなのに、おむつの話をしないんだワン?
探偵TOCHI
TOCHIそう、むぎちゃん。おむつという言葉は、いろんな困りごとの入り口として使われるんだ。だから探偵は、まず現場を見る。どこで、いつ、誰が困っているのか——それが分かってから、道具の話をしても遅くない。

排泄の困りごとを、4つの場面で分ける

場面を分ける前に、ひとつだけ確認していることがあります。同じ「漏れる」というご相談でも、ご本人とご家族が困っていることは、同じとは限らないということです。

あるご相談では、ご本人は「おむつがかさばって気持ち悪い」こと、ご家族は「ご本人が触ることでパッドがずれて漏れる」ことに困っていらっしゃいました。起きている出来事は一つでも、困っている中身は別々です。まず、ご本人とご家族のそれぞれが、どの場面で何に困っているかを分けて確認します。

🟩 TOCHIの判断ポイント|場面を分ける前に確認すること

まず確認:ご本人とご家族、それぞれが何に困っているかを分けて聞きます。

なぜ:同じ出来事についてのご相談でも、困っている中身が違うことがあるからです。

どうする:両方を伺ったうえで、次の4つの場面のどれに当てはまるかを分けます。

そのうえで、排泄の困りごとを次の4つの場面に分けます。道具から選ばず、困っている場面から分ける——ここが、この記事のいちばん言いたいところです。

  • ① トイレまでの道のりが不安……トイレはご自分で使えるけれど、そこまで行き着くまでが心もとない場面です。
  • ② 夜だけ間に合わない……日中は間に合うのに、夜間だけ間に合わない場面です。困っているのは道具ではなく、時間帯です。
  • ③ 漏れる……すでに使っているものから漏れてしまう場面です。ご相談として、いちばん多いのがここです。
  • ④ 後始末の負担……交換や片付けそのものが重くなっている場面です。
どこで困っている?トイレまでの道のりが不安、夜だけ間に合わない、漏れる、後始末の負担の4つの場面。本人と家族、それぞれの困りごとを確認。

4つのうち、どれか1つだけに当てはまる方もいれば、複数にまたがる方もいらっしゃいます。その場合は、いま最もお困りの場面から手をつけます。全部を一度に整えようとすると、何が効いたのかが分からなくなってしまうからです。

このうち④の「後始末の負担」については、この章の中で確認しておきます。ここで見るのは、交換や片付けを誰が担っているかです。私が聞いた例では、パンツタイプはご本人、テープ止めはご家族やヘルパーなどが交換・片付けを担っていました。担っている人が違えば、選ぶものも、確認する場所も変わります。まずは、その役割がどうなっているかを聞くところからです。

担い手を確かめていくと、家族だけでは回りきらない時間帯が見えてくることがあります。介護保険で頼める範囲に収まらない部分については、費用を自己負担する保険外サービスという選択肢もあります。ただし使う前に確認する順番があるので、介護保険外サービスとは?できること・料金と家族だけで回らないときの選び方にまとめました。

道具の前に、相談するライン

場面を分けたあと、道具の話に進む前に、通っておきたい確認があります。排泄の急な変化は、道具の前にまず相談するということです。

排泄の変化の中には、用具選びだけで対応しない方がよい症状もあります。日本泌尿器科学会が一般の方向けに公開している解説にも、尿がまったく出ない、排尿時に痛む、排尿症状を伴う発熱があるといった症状が挙げられています(日本泌尿器科学会「こんな症状があったら」)。こうした、いつもと違う変化がある場合は、道具を選ぶ前に医療機関へご相談ください。

なぜ、道具より先に相談なのか。理由は単純で、道具は今の状態に合わせて選ぶものだからです。体のほうに変化が起きているときに、その変化を確かめないまま道具だけを替えると、合わないものを買い足していくことになりかねません。まず今の状態を確かめる。そのうえで、日々の使いやすさを整える道具を考える——この順番であれば、選んだものが手元で余りにくくなります。

🟨 TOCHIからひとこと

道具を選び直すことと、体の変化に対応することは、別の話です。いつもと違う変化があるときは、道具を替える前に、医療機関や訪問看護など医療の専門職へご相談ください。そのうえで、日々の使いやすさを整えるところに、私たち福祉用具の側からお手伝いできることがあります。

まず、今のトイレで困りごとを減らせないか考える

急な変化ではないと分かったら、次に見るのはここです。今のトイレで続けられる方法がないか、動線や環境から確認する——道具を足す前に、今ある場所をどう使えるかを見ます。

では、何から確認する?困っている場面を確認する。急な変化があるときはまず相談する。急な変化ではないときは、道のりが不安なら動線を見直す、夜間・距離が問題ならポータブルトイレを検討、漏れがあるならパッドの当て方・収まりを確認、後始末が負担なら交換や片付けを誰が担っているか確認する。

①の「トイレまでの道のりが不安」であれば、見るのはトイレそのものではなく、そこまでの道のりです。寝床から出るところ、廊下、トイレの出入り口、便座から立ち上がるところ——どこで手をついているかを、生活の動きの順にたどります。手すりの考え方は、介護の手すりはどこに付ける?にまとめました。場所から選ばず、動きから見ていく点は、この記事と同じ考え方です。

②の「夜だけ間に合わない」であれば、距離と時間帯の問題です。日中は間に合うのに夜間だけ難しいのなら、夜のあいだだけ距離を縮める方法があります。寝床のそばに便座を置く、ポータブルトイレの検討はここから始まります。置く場所・移り方・片付ける人という決め方は、ポータブルトイレの選び方にまとめています。

現場で感じてきたこととして、ご本人の受け止め方も、道筋を分ける材料になります。ご本人の判断がしっかりしているほど、おむつを使うことへの抵抗感が語られることが多く、そうしたお話が出たときには、おむつの前にポータブルトイレをご提案したことがあります。ご本人がどう受け止めているかは、伺わないと分かりません。

すでにおむつを使っている場合も、この確認は同じように役に立ちます。おむつだけで解決しようとせず、トイレまでの動線や、困る時間帯も一緒に見る。今の使い方を変えずに続けながら、動線を整えたり、夜だけ距離を縮めたりすることはできます。どちらか一方を選ぶ話ではありません。

漏れ・間に合わないときの考え方

③の「漏れる」は、ご相談としていちばん多い場面です。ここで覚えておいていただきたいのは、漏れは単品ではなく、組み合わせで起きるということです。ですから、大きいものへ買い替える前に、今の組み合わせを見直す順番があります。

より大きいものへ替えれば収まりそうに思えるのは、自然な考え方です。ただ、吸収量を増やすことと、収まりをよくすることは、別の話です。

確認する順番と、当て方や収まりの具体的な見方は、大人用おむつから尿が漏れる原因は?にまとめました。この記事では、そこへ進む交通整理までにとどめます。

もうひとつ、時間帯で分ける考え方もあります。日中はご家族が替えられるけれど、夜間は難しい——そうしたご事情から、夜間だけ尿量の多いパッドを使っている方がいらっしゃいます。道具そのものを替えるのではなく、時間帯によって吸収量を変えるという形です。困っているのが一日中なのか、特定の時間帯なのかで、動かす場所は変わります。

制度の入り口だけ、整理しておく

費用の話も、入り口だけ知っておくと動きやすくなります。ここで押さえるのは2点です。

ひとつめ。対象となるポータブルトイレは、介護保険では「腰掛便座」として特定福祉用具販売の対象になります(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」特定福祉用具販売)。私が店頭でお伝えしていた線引きとしては、この特定福祉用具の対象に、おむつは含まれません。

ふたつめ。おむつの助成制度は、自治体によって異なります。私がご案内していた範囲でも、非課税世帯を対象におむつの助成を行っている自治体があり、該当しそうな方にはその窓口をお伝えしていました。ただし、これはお住まいの市区町村によって、対象も条件も変わります。ポータブルトイレには介護保険の購入対象になるものがある。おむつの助成は市区町村で異なるため、買う前に確認する——制度については、この2点を持っておけば動けます。

ポータブルトイレを介護保険で購入する場合の手順や、購入前に確認しておく点は、ポータブルトイレの選び方の中でまとめています。おむつの助成については、お住まいの市区町村の窓口や、担当のケアマネジャーにご確認ください。

まとめ|道具の前に、困っている場面を分ける

排泄のご相談は、商品名から始まることがほとんどです。けれど、聞き返してみると、困っている場面はそれぞれ違います。場面が分かれると、次に確認する先も決まります。この記事でお伝えしたことを、もう一度並べます。

  1. 道具から選ばず、困っている場面から分ける
  2. 排泄の急な変化は、道具の前にまず相談する
  3. 今のトイレで続けられる方法がないか、動線や環境から確認する
  4. ポータブルトイレには介護保険の購入対象になるものがある。おむつの助成は市区町村で異なるため、買う前に確認する
むぎ
むぎおむつの相談なのに、答えが手すりだったりポータブルトイレだったりするんだワン。びっくりだワン。
探偵TOCHI
TOCHIそうなんだ、むぎちゃん。道具は、困りごとの形が見えてから決まる。だから探偵は、商品棚より先に、その方の一日を聞くんだよ。
調査結果:排泄の困りごとを分ける順番。道具から選ばず、どこで困っているかを分ける。本人と家族で困っていることは違うことがある。急な変化があるときは道具より先に相談する。今のトイレで続けられないかを先に確認する。

🕵️ TOCHIの現場メモ

店頭では、ほとんどのご相談が商品名から始まります。「おむつはどれがいいですか」と聞かれて、今の様子を伺っていくうちに、お出しするものが変わっていくことは珍しくありません。夜のあいだのことだけが心配だと分かって、おむつではなくポータブルトイレをご案内したこともあります。

場面が決まった方は、それぞれの記事へお進みください。夜間や距離が問題ならポータブルトイレの選び方、漏れでお困りなら大人用おむつから尿が漏れる原因は?にまとめています。どちらも、買い足す前に確認できるところから書いています。

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