「バスに乗るとき、シルバーカーはどうしたらいいですか」。売り場で何度も受けたご相談です。バスで使う方は多く、電車へ持ち込む方もいます。ただ、17年間の接客で最初に確認していたのは、たたみ方でも車内のマナーでもありませんでした。この記事では、福祉用具専門相談員として売り場に立ってきた経験と、メーカー公式・取扱説明書・介護用品カタログ等で確認した仕様を使って、バス・電車への持ち込みを前提にしたコンパクトタイプの選び方を整理します。
この記事で扱うのは、手で押して使うシルバーカーです。「電動シルバーカー」と呼ばれるシニアカー(ハンドル形電動車いす)は、鉄道での利用条件が異なるため、別に確認してください。シニアカーの利用条件は、国土交通省やJR東海の公式案内で確認できます。


バス・電車への持ち込みは、事業者・車両で扱いが異なる
一般的な手押し式シルバーカーは、バスや電車で利用されています。ただし、乗り降りの方法や車内での置き方、受けられるサポートは、交通事業者や車両によって異なります。利用する路線が決まっている場合は、事前に確認しておくと安心です。
同じ「バス」でも、床が低く段差の少ないノンステップ車と、乗降口にステップのある車両では、乗り方が変わります。ノンステップ車でも路面との段差やすき間が残り、前輪を浮かせたり、車体を持ち替えたりする場面があります。ステップのある車両では、車体を持ち上げる必要が生じることもあります。路線や車両を選べない場合は、「持ち上げる場面がある」と考えて機種を選ぶのが現実的です。

確認するのは「荷物込みで持ち上げられるか」
売り場で確認していたのは、「バスにシルバーカーを持ち上げることはできるか」でした。ここで大事なのは、カタログの本体重量だけを見ないことです。買い物をすれば、シルバーカーには荷物の重さが加わります。実際に持ち上げるのは、その重量ごとです。
この記事で比較する軽量機種は、本体だけなら2.7〜4.0kgです。そこに普段の買い物が加われば、その分だけ総重量は増えます。積載荷重の範囲内であっても、本人が持ち上げられるとは限りません。ペットボトルや調味料を買った日は、さらに重くなります。「本体が軽いから大丈夫」ではなく、「普段の買い物を入れた状態で持ち上げられるか」を確かめてください。

🟩 TOCHIの判断ポイント|バスに持ち込みたいと相談されたら
まず確認:普段の買い物の量を入れた状態で、持ち上げられるか。
なぜ:乗り降りでは、片手で手すりを持ち、もう片方の手で車体を支える場面があるからです。
どうする:家で荷物込みの重さを持ち上げて確かめてから、機種と買う量を決めます。
荷物が入っていると、折りたたみにくい
「バスではたたむのがマナーでは」と考える方は多いのですが、売り場でお客様から聞いていた実際は少し違います。ほとんどの方は、折りたたまずにそのまま押して乗るか、折りたたまずに持ち上げていました。
理由は単純で、シルバーカーの中に荷物が入っているときは、なかなか折りたためないからです。荷物の量や形によっては、袋から取り出さないとたためません。しかし、バスの乗降口で荷物を全部取り出すのは現実的ではありません。買い物帰りは、その場で簡単にたためない場合があると考え、車内での扱いを交通事業者へ確認しておくと安心です。

もちろん、折りたたんで持つ方が持ち上げやすいのは確かです。荷物が少なく、その場でたためるなら、たたむ方が簡単な場面もあります。ただし、たためても、持ち上げられるとは限りません。実際に、折りたたんで抱きかかえたものの、バスへの乗車時に十分に持ち上がらなかった事例が報告されています。ただ、機種選びの主軸は、カタログの折りたたみ寸法ではなく、「普段の荷物を入れた実際の状態で持ち上げられるか」に置いてください。
折りたたみ方・段差での操作は機種ごとに違う
同じ軽量タイプでも、たたみ方や段差での操作は機種ごとに違います。取扱説明書の記載を3機種で比べると、その違いが分かります。
- ナノンDXの取扱説明書では、前輪を浮かせる操作として——「押し手を持ち、車体を後ろへ傾けて前輪をあげてください」
- ライトステップでは、折りたたむ際の操作として——「手さげバッグの取っ手を持ちあげて、折りたたんでください」
- アルキュートULでは、折りたたみレバーの操作として——「片手でハンドルを持ち、もう片方の手で折りたたみ用レバーを上方に引き上げます」
注意したいのは、これらはいずれも段差操作や折りたたみの説明であって、車体全体を持ち運ぶ位置の説明ではないという点です。持ち運ぶときにどこを持つかが取扱説明書で確認できる機種は限られます。車体全体を持ち運ぶ位置が取扱説明書で確認できない場合は、販売店またはメーカーに持ち運び方を確認してください。そのうえで、安全な場所でスタッフと一緒に、実物の重さと扱いやすさを確かめてから決めます。

軽量シルバーカー5機種と、持ち上げやすさから考える別の選択肢2機種
持ち込みに向く軽量のコンパクトタイプ5機種を比較します。数値は、メーカー公式サイト・取扱説明書・介護用品カタログ等で確認したものです。
表A:軽量シルバーカー5機種
| 機種 | 本体重量 | 容量 | 積載荷重 | 最大使用者体重 |
|---|---|---|---|---|
| テイコブ ナノンDX(幸和製作所) | 2.7kg | 2+1L | バッグ2kg・ポーチ1kg | 80kg |
| アルキュートUL(リッチェル) | 3.0kg | 2.2L | 1.5kg | 80kg |
| モート(島製作所) | 3.7kg | 6L | 5kg | 80kg |
| キャリースルーンN(マキテック) | 3.7kg | 4L | ―(確認した公式カタログでは記載を確認できず) | 100kg |
| ライトステップ タイニーWヌーボー(ウィズワン) | 4.0kg | 4.0+1.5L | 前袋2kg・後袋1kg | 100kg |
最大使用者体重は、使用できる人の体重の上限です。シルバーカーを持ち上げられる重さや、座面だけの耐荷重を示す数字ではありません。
コンパクトタイプは、本体が軽く小さいため持ち運びの候補になります。一方で、収納量や座面の広さは限られ、押したときの安定感にも機種差があります。自分の足で歩ける方が、実物で操作性を確認したうえで選ぶタイプです。
ここで挙げる機種は、順位ではありません。本体重量だけでなく、荷物を入れた状態で扱えるか、座面の使用条件、降りた後の使い方を確認してください。
Amazonでは、色・型番・在庫をご確認ください。
スワニーはシルバーカーではなく、メーカーが歩行を支える独自構造を案内している横押しキャリーバッグです。公式サイトでは「体の横で4輪を接地させた状態で押し歩くと体が支えられ楽に移動できます」と案内されています。本体が特に軽く、手提げで持ち上げる形が用意されているため、「持ち上げやすさ」から見た別の選択肢として2機種を挙げます。
表B:別の選択肢2機種
| 機種 | 本体重量 | 容量 | 手提げ | 座面 |
|---|---|---|---|---|
| スワニー ジップVII(D-583・TS15) | 2.0kg | 約7L | あり(持ち手立ち上がり約14cm) | なし |
| スワニー プレーネ座面付(D-639・L21) | 3.2kg | 約19L | あり | あり(高さ41×横27×奥行24cm)※座面の耐荷重は公式商品ページで確認できず |
この2機種は順位ではなく、条件の違う選択肢です。座面を使う場合は、使用方法と耐荷重をメーカーまたは販売店に確認してください。プレーネは、今回確認した公式商品ページでは座面耐荷重を確認できませんでした。本体重量を優先する場合はジップVIIも候補になりますが、バスでの扱いやすさと降りた後の使い方を含めて選びます。
バスの乗り降りと車内での置き方
持ち上げる場面は、乗るときと降りるときの両方にあります。乗降時には、片手で手すりを持ち、もう片方の手でシルバーカーを支える場面があります。片手で荷物込みの重さを持ち上げると、バランスが取りにくくなります。テクノエイド協会のヒヤリハット情報にも、バスのステップでシルバーカーを持ち上げようとした場面の事例が報告されています。体勢を崩すと転倒につながるおそれがあるため、一人でこの方法を取るのは、自分の足で安定して歩ける方に限られます。
介助を前提にせず、自分で扱えるかを確認します。ただし、事前連絡による乗降サポートやノンステップ車の案内を行う事業者もあります。たとえば全但バスは、事前連絡による乗降のサポートを案内しています。利用する路線に同じような案内がないか、確認してみてください。
車内で広げたまま置ける場合は駐車ロックをかけ、動かないように支えます。ただし、置き場所や折りたたみの要否は車両によって異なるため、乗務員の案内に従ってください。

電車はバスと条件が違う
電車に持ち込んで使っている方もいます。ただし、電車はバスと条件が違います。乗降口の段差はバスのステップより小さい場合が多い一方で、ホームと車両の間にすき間や段差のある駅もあります。エレベーターの位置や改札からホームまでの経路は駅ごとに違うので、よく使う駅の設備を一度確認しておくと、当日に迷いません。困ったときは駅係員に相談できます。

冒頭でふれたとおり、シニアカー(ハンドル形電動車いす)は鉄道での利用条件が別に定められています。この記事の対象は手押し式のみです。
一人で持ち込むのが難しい場合の選択肢
ここまでの確認で「荷物込みでは持ち上げられない」となった場合、一人でバスに持ち込む使い方は難しくなります。その場合の考え方は3つあります。

- 本当に軽い機種にする:表の中では、スワニー ジップVII(2.0kg)やナノンDX(2.7kg)が軽い側です。本体が軽いほど、荷物を入れても総重量を抑えられます
- 買う量を「持ち上げられる量」までに絞る:バスで持ち帰るのはその日に使う分までと決めて、残りは配達や家族の買い足しと組み合わせます。表Aのコンパクトシルバーカー5機種は、掲載容量の合計が2.2〜6Lと小さく、2〜3日分をまとめて持ち帰る使い方には向きません。容量が大きめの機種でも、入る量には限りがあります。
- 一人で運ばない日を作る:まとめ買いは家族と一緒の日にする、という分け方も現実的です
2つ目と3つ目は、機種ではなく「買う量」の話です。買い物の量から考える選び方は、シルバーカーと買い物かごの記事で詳しく整理しています。判断に迷うときは、福祉用具専門相談員や、お住まいの地域包括支援センターに相談してください。


まとめ
シルバーカーはバスや電車で利用されています。持ち込みを前提に選ぶときの順番は次のとおりです。
- 本体重量ではなく、普段の荷物込みで持ち上げられるかを確かめる
- 荷物が入っているとたたみにくい。折りたたみの要否や置き方を事前に確認する
- たたみ方・段差操作は機種ごとに違う。持ち運び方を販売店やメーカーに確認し、安全な場所で実物を試す
- 利用する路線の乗り降りの方法とサポートを事前に確認する
シルバーカー全体の選び方(コンパクト・ミドル・ボックス・横押しの違いや、座面・キャスターの見方)は、シルバーカーの選び方(総論)で整理しています。
出典(確認日:2026年8月21日)
- テクノエイド協会|福祉用具ヒヤリ・ハット情報(バスのステップでの持ち上げ場面の事例)
- 全但バス(事前連絡による乗降サポート・ノンステップ車の案内)
- 国土交通省/JR東海(シニアカー〈ハンドル形電動車いす〉の鉄道利用条件)
- 島製作所|シルバーカー(自立歩行できる方が補助的に使用するタイプ)
- 各機種の仕様:メーカー公式サイト・取扱説明書・介護用品カタログ
※比較表の数値は、メーカー公式サイト・取扱説明書・介護用品カタログ等で確認しています。


コメント