

シャワーチェアは「浴室の広さ」から選ぶ
シャワーチェアは、入浴用品の中でもいちばん多く選ばれている道具です。売り場でも、入浴用品の販売の7〜8割をシャワーチェアが占めていました。それだけ種類も豊富で、初めて選ぶ方が迷子になりやすい道具でもあります。
選ぶ最初の一歩は、商品カタログではなく自宅の浴室です。逆に、商品の機能から入ると「良さそうなものを買ったのに浴室で使いにくい」が起きやすくなります。
🕵️ TOCHIの現場メモ:売り場での選定は、まず浴室の環境、そこに本人の体調(ADL)を合わせる——この順番で行っていました。浴室の大きさが分からないまま機能の相談から始めると、あとで置けない・動けないが出てくるためです。

シャワーチェアの座面幅には、おおまかにコンパクト(約35cm)・ミドル(約40cm)・ワイド(約45cm)という体系があります。多くのシリーズがこの3段階前後でサイズ展開しているので、この物差しを知っておくだけで商品ページがぐっと読みやすくなります。
ゆったり座るなら幅が広いほうが快適です。ただ、浴室が狭いのに大きなものを選ぶと、洗い場が椅子でふさがって介助する家族の立つスペースが取れないという失敗が起きます。一人で入る場合も、椅子が大きすぎると出入りやシャワーの動線が窮屈になります。
だから最初に、洗い場のどこに置くか、置いたときに人が動けるかを見ます。浴室のドアの開き方や、蛇口・カランの位置との関係も、置き場所に影響します。介助が要る場合は、椅子の横か後ろに介助者の立ち位置が残るかどうかまで見ておきます。
広さの確認は、メジャーで洗い場の幅と奥行きを測っておくだけで十分です。その数字をケアマネジャーや福祉用具専門相談員に伝えれば、置ける座面幅の範囲が絞れます。ここが決まってから、本人に合う機能を足していく——それが遠回りに見えて一番確実な順番です。
立ち上がりと座る姿勢で、必要な機能が変わる
浴室の広さで置けるサイズが決まったら、次は本人の動作に目を移します。見るのは大きく2つ——「立ち座りがどれくらい不安か」と「座っている姿勢が保てるか」です。この2つで、高さ・背もたれ・肘掛けという機能の要否が決まっていきます。
高さ調節
ほとんどのシャワーチェアは、脚の長さを数段階で調節できます。足裏がしっかり床につく高さが基本です。ただし、合う高さは浴室の床や本人の状態によって変わるため、高さは専門職が実際に合わせます。
座面が高めだと立ち座りはしやすく、低めだと座っている姿勢は安定しやすい——という関係があります。膝や腰の状態によっても感じ方が変わるところなので、数字だけで決めず、実際に座って確かめながら合わせてもらってください。商品を比べるときは「何cmから何cmまで調節できるか」の範囲を見ておくと、あとから本人に合わせる余地が分かります。
背もたれの要否
座って体を洗っている間に、姿勢が疲れて崩れてくる方には、背もたれ付きが候補になります。もたれる場所があるだけで、洗っている間の安心感が変わります。体を洗う時間は意外と長く、シャンプーまで含めれば10分以上座り続けることもあります。その間ずっと自力で姿勢を保つのがつらいかどうか——が判断の目安です。いま販売されているシャワーチェアは背もたれ付きが主流で、この記事で紹介する4点も背もたれ付きです。そのうえで「もたれつつ、背中をどう洗うか」が次の論点になります。
ただし、ここで知っておきたいのが機能の裏表です。背もたれがあると、その分、背中が洗いにくくなります。介助する方が背中を洗う場面では、背もたれが手の入る場所をふさぐためです。
🕵️ TOCHIの現場メモ:この「肘掛けや背もたれは立ち座りを助けるけれど、その分洗いにくくなる」という裏表は、売り場でお客様に先にお伝えしていたことです。知らずに買うと「支えは増えたのに洗いにくい」と戸惑いやすいところなので、この記事でも先にお伝えしておきます。
「支え」と「洗いやすさ」は、片方を取ればもう片方が下がる関係にある——シャワーチェア選びでいちばん大切な視点です。
🟩 TOCHIの判断ポイント|シャワーチェアを選ぶとき
まず見る:浴室の広さと、立ち上がりや座る姿勢がどれくらい不安か
なぜ:シャワーチェアは広さ・高さ・背もたれ・肘掛けで座り心地と洗いやすさが変わり、浴室や本人の状態に合わないと使いにくいため
どうする:困っている場面と浴室の広さをケアマネジャーや福祉用具専門相談員に伝え、高さは実際に合わせてもらいながら選ぶ
ここまでで「広さ」「高さ」「背もたれ」が整理できました。残るは、いちばん判断が分かれる肘掛けです。次の章でじっくり見ていきます。
肘掛けは「立ち座りの助け」と「洗いにくさ」の両面で考える
肘掛けは、シャワーチェアの機能の中でも裏表がいちばんはっきり出る部分です。カタログでは「肘掛け付き=上位モデル」のように見えますが、付いていれば良いという単純な話ではありません。順番に見ていきます。
肘掛けのメリット
座るとき・立つときに手で支える場所ができるのが、肘掛けの最大の役割です。濡れた浴室での立ち座りは力の入れどころが難しいので、両手で押して立てる支えがあると動作が楽になります。座っている間も、腕の置き場があることで姿勢が安定します。第2章の「立ち座りがどれくらい不安か」で不安が大きめだった方ほど、肘掛けの価値は上がります。
肘掛けの裏側
一方で、肘掛けがあると体の横から洗いにくくなります。介助する方が横から手を入れるとき、肘掛けがちょうど邪魔になる位置に来るためです。また、座ったまま体の向きを変える動作も、肘掛けがあると動きが制限されます。
この点は、跳ね上げ式(上に持ち上げられるタイプ)の肘掛けなら解決できます。洗うときや移動のときだけ上げて、立ち座りのときは下ろして支えにする——という使い分けができるためです。いまの主流モデルの多くが跳ね上げ式を採用しているのは、この裏表への答えでもあります。
⚠️ 購入前のチェックポイント
コンパクトタイプは肘掛けが付くことで座面が狭くなる商品があります。体格によっては窮屈に感じることもあるため、購入前に一度座って確認すると安心です。特に体格が大きめの方は、座面幅も確認しておきましょう。
肘掛けは「あれば良い」ではなく、立ち座りの支えがどれだけ必要かと洗いやすさをどれだけ残したいかの釣り合いで決めます。迷ったら、跳ね上げ式を候補の軸にすると考えやすくなります。
タイプ別に見る、シャワーチェア
ここまでで選んだ条件に合うタイプを見ていきます。
並べ方は、ここまでの4ステップの順です。順位付けではありません。それぞれ「どんな困りごとに応える一台か」で見てください。売り場でも、利用者やご家族が最後に決め手にするのはメーカー名ではなく、この「自分の困りごとに合うかどうか」でした。

狭い浴室に置きやすい|肘掛けなしのシンプルなタイプ
楽らく開閉シャワーベンチCN。背もたれは付きつつ、肘掛けのないコンパクトなタイプです。肘掛けがないぶん座面まわりがすっきりしていて(座面幅37cm)、狭い浴室でも介助スペースを残せます。体の横から洗いやすいのも、肘掛けなしならではの持ち味です。
座面高は33〜43cm(2cm間隔・6段階)で調節でき、押して開く・引いてたたむのワンアクションで折りたたんで壁際に置いておけます。「もたれる場所は欲しいが、立ち座りは自分で安定してできる」——そんな方が、浴室を広く使いながら座れる場所を作るための一台です。
背もたれ・肘掛けでしっかり支えたい方に
楽らく開閉シャワーベンチSフィット。背もたれと跳ね上げ式の肘掛けが付いた、支え重視の定番形です。第3章でみた「跳ね上げ式なら洗うとき・移るときだけ上げられる」を、そのまま形にした一台と言えます。座面高は36〜48cmと高めまで調節できるため、膝が曲げにくく低い椅子から立ちにくい方にも合わせやすくなっています。
同じシリーズには、一回り小さく座面高も低め(33〜43cm)のSコンパクトと、本体幅にゆとりのある大きめのタイプ(S・U=本体幅51cm)もあります。浴室の広さと体格に合わせて、同じ機能の系統のままサイズを選べるのがこのシリーズの持ち味です。第3章でみたとおり、コンパクトを選ぶときは肘掛けと座面幅の関係を現物で確かめてください。
背中も洗いたい、でも姿勢も支えたい方に
ユクリア ミドルSP腰当付おりたたみN。「背もたれがあると背中が洗いにくい」という第2章の裏表を、腰当てという形で解決したタイプです。背中の下部(腰まわり)だけを支え、上部は開いているので、姿勢を支えながら介助者が背中を洗えます。
座面高は36〜46cm(2cm間隔・6段階)で調節でき、使わないときは折りたたんで立てて収納できます。背もたれ付きとの違いはまさに「上が開いているか」で、「支え」と「洗いやすさ」の両方を取りたい場面の答えになります。
浴槽への移乗で、座ったまま向きを変えたい方に
楽湯 くるまる コンパクト。座面が回転するタイプです。自分で立って向きを変えるのが難しい方が、座ったまま体の向きを変えられるのが持ち味で、浴槽への出入りの介助や、狭い洗い場での方向転換で力を発揮します。立って回る動作が減るぶん、介助する方の負担も軽くなります。
先に確認したい点:このタイプの耐荷重は80kgです(この記事のほかの3点は100kg)。体格に合うか、購入前に確認してください。
4点とも、メーカーではなく「どの困りごとを解決するか」で選び分けるのがコツです。売り場でも、利用者やご家族はメーカー名ではなく機能で選ばれていました。「肘掛けなしでコンパクトに」「背も肘もしっかり」「背中を洗いたい」「向きを変えたい」——第1〜3章で整理した自分の条件と、この4つの答えを照らし合わせてみてください。
買う前に確かめたいこと
シャワーチェアの「買ってから合わなかった」は、たいてい浴室か体格とのミスマッチで起きます。最後に、失敗を減らすための確認をまとめます。
- 体格と肘掛けの相性を現物で確認する——コンパクト×肘掛けは座面幅が狭くなる商品があります(第3章)
- 浴室の洗い場の広さを測っておく——置いたときに人が動けるかまで含めて
- 高さは専門職に合わせてもらう——足裏が床につく高さが基本。実際に座って調整
- 介護保険で買えるか確認する——シャワーチェア(入浴用いす)は特定福祉用具販売の対象です
シャワーチェアは、介護保険の特定福祉用具販売の対象です。償還払い・年間上限10万円(4月〜翌3月)・都道府県指定の事業者での購入が条件になります。ホームセンターや通販で自費購入もできますが、保険を使う場合は指定事業者での購入が前提になるので、順番を間違えないことが大切です。制度の詳しい仕組みや手続きの流れは、入浴用品の選び方(総論)にまとめています。購入を考え始めたら、まずケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。
なお、シャワーチェアとあわせて床の滑り対策を考える場合は、お風呂の滑り止めマット3選も参考にしてください(マットは介護保険の対象外・自費です)。
シャワーチェアは毎日使う道具なので、届いてからの「合わない」がいちばんもったいない買い物です。浴室を測る・現物に座る・専門職に高さを合わせてもらう——この3つを挟むだけで、その失敗のほとんどは防げます。急がば回れ、で選んでください。
まとめ
シャワーチェアは、浴室の広さ→立ち上がりの不安→背もたれ→肘掛けの順に絞っていくと、種類の多さに迷わず選べます。そして機能には裏表があります。背もたれは姿勢を支えるが背中が洗いにくい。肘掛けは立ち座りを助けるが座面が狭くなる商品もある。その釣り合いを、浴室と本人に合わせて決めていく——それがこの記事の結論です。

🔍 調査結果カード|シャワーチェアの選び方
シャワーチェアは、浴室の広さから選び始め、立ち上がり・背もたれ・肘掛けの順で機能を足し引きします。機能の裏表(支えと洗いやすさの釣り合い)を知って選ぶと、買ってからの「合わない」を減らせます。
浴槽のまたぎや浴槽内の立ち座りなど、ほかの動作の道具は入浴用品の選び方(総論)から辿れます。浴槽をまたぐ道具は詳しくは浴槽用手すりとバスボードの選び方|ユニットバスに付くかはフチの厚みで決まるに、浴槽台は浴槽台の選び方|立ちやすい高さと肩まで浸かれる高さは違うにまとめています。




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