

またぎの補助には、2つの道がある
浴槽をまたぐ動作を助ける道具は、大きく2つに分かれます。立ってまたぐことを支える浴槽用手すり(浴槽グリップ)と、座ってまたぐためのバスボードです。どちらの道に進むかで、見るべき商品がまったく変わります。
浴槽用手すりは、浴槽のフチにはさんで固定し、またぐときの支えになる道具です。バスボードは、浴槽の上に渡した板に腰を掛けて、足を片方ずつ運ぶ道具です。「支えがあればまたげる」のか、「またぐ動作そのものを変えたい」のか——この違いが、2つの道の分かれ目になります。

浴槽用手すりもバスボードも、介護保険の「特定福祉用具販売」の対象です。ただし購入先が決まっているため、通販サイトで買った場合は対象になりません。制度の詳しい説明は入浴用品の総論にまとめています。
この記事では、①またぎ方を決める→②フチの厚みを測る→③在来かユニットバスかを確かめる→④商品を選ぶ、という4つのステップで進めます。読み終わるころには、自宅の浴槽に「何が付くか」を自分の言葉で相談できるようになります。
STEP1 立ってまたぐか、座ってまたぐか
最初の分かれ道は「またぎ方」です。立ったまま片足ずつまたげる方は、支えになる浴槽用手すりが候補になります。立ってまたぐことに不安がある方は、腰を掛けて足を運ぶバスボードが候補になります。
浴槽のまたぎは、片足立ちになる瞬間がある動作です。手すりがあれば片足立ちの間の支えができ、バスボードなら片足立ちそのものをなくせます。同じ「またぎの補助」でも、助け方の質が違う——だからこそ、どちらの道かを最初に決めます。
ここで大切なのは、「立ってまたげるかどうか」をご家族が判定しないことです。この見極めは、聞き取りと実際の動作確認で行うもの——つまり専門職の領域です。
🕵️ TOCHIの現場メモ:売り場でも、立ってまたげるかどうかの見極めは、聞き取りをするか、お宅に伺って実際の動作を確認して行っていました。本人の感覚と実際の動作は違うことがあるので、ここは目で見て確かめるところです。
🟩 TOCHIの判断ポイント|浴槽用手すりを選ぶ前に
まず見る:浴槽のフチの厚みと、ユニットバスかどうかを見ます。
なぜ:手すりが付くかどうかは、体ではなく浴槽の形で決まるからです。フチの厚みが合わなければ、どんなに良い商品でも取り付けられません。
どうする:浴槽は測れますが、立ってまたげるかどうかは測れません。用具が付くかは寸法で確かめ、またげるかどうかの見極めは福祉用具専門相談員やケアマネジャーにご相談ください。
付くかどうかは、浴槽で決まる

浴槽用手すりの商品名には「130」「200」といった数字が入っています。これは取り付けられるフチの厚みの目安を表していて、おおまかに130系=フチ厚4.5〜13cm、200系=12〜20cmに対応します。つまり最初にやることは、商品選びではなく自宅の浴槽のフチの厚みを測ることです。
測り方はシンプルで、メジャーでフチ(浴槽の壁の上端)の厚みを測るだけです。場所によって厚みが変わる浴槽もあるので、手すりを付けたい位置の数値を測ります。メーカーの取扱説明書には「厚みの差が3cm以内」といった条件もあるため、何カ所か測ってメモしておくと、そのまま相談時の材料になります。
在来工法かユニットバスか——違いの正体は「脚」
もうひとつの関門が、在来工法の浴室か、ユニットバスかです。ユニットバスの浴槽は側面がエプロン(カバー)で覆われていて、フチの内側をはさみ込む一般的な手すりが使えません。そのためユニットバスには専用タイプを選びます。
専用タイプの違いの正体は「脚」です。安寿は「洗い場への出っ張りを抑えた省スペース設計」、パナソニックは「浴槽への負担を軽減するための脚をアジャスターで突っ張って安定させる」と、それぞれ説明しています。ただ、どちらも脚が洗い場側に立つぶん、洗い場のスペースを使うのも事実です。洗い場にシャワーチェアを置いている場合は、両方を置けるかまで考えておきます。
🕵️ TOCHIの現場メモ:売り場での実感として、浴槽グリップは決定率がかなり低い商品でした。ユニットバスにはエプロンがあるため専用タイプしか付けられず、その専用タイプは本体が大きく、付けると洗い場が少し狭くなる——ここで見送りになる方が多かったのです。だからこそ、最初からバスボードや住宅改修も含めた広い選択肢で考えるのが現実的です。
浴槽のタイプ別の付けやすさ
浴槽の素材や年代によっても、付けやすさは変わります。タイル張りの在来浴室は比較的付けやすく、フチの厚みもだいたいは調整範囲に収まります。一方、昔のステンレス浴槽はフチが細く、対応範囲から外れて付けにくいことがあります。ユニットバスはフチが湾曲していることが多く、ここも確認が要ります。
なお、フチの湾曲にどこまで対応できるかはメーカーによって違います。1社の製品が付かなくても、別のメーカーなら付くことがある——だからこの記事では、パナソニックと安寿(アロン化成)の両方を紹介します。

立ってまたぐ人の浴槽用手すり
立ってまたぐ人向け(商品4点)
ここからは、フチの厚み・浴室のタイプという条件に合わせた4つの枠で見ていきます。サイズ違い(130/200など)は同じ枠の中で選び分けてください。
浴槽用の手すりは、最大使用者体重が製品によって異なります。100kgまでのものと80kgまでのものがあり、メーカーによって違います。シャワーチェアは100kgまでが主流なので同じだと思われがちですが、浴槽用手すりでは確認が必要です。手すりは体重を預けてまたぐ道具ですので、購入前にご本人の体重と製品の表示を必ず確認しておきましょう。
この章ではパナソニックと安寿(アロン化成)の両方を並べています。どちらが良い悪いではなく、フチの厚み・湾曲・高さ調節の要否で合うほうが変わるためです。1社の対応表で付かなくても、もう1社なら付くことがある——2つの対応表を見比べるのが、この章の使い方です。
在来工法の浴槽に|はさんで固定するタイプ
入浴グリップ ユクリア コンパクト130(在来工法用)。フチをはさんで固定する基本の形で、130はフチ厚4.5〜13cmに対応します。フチが厚い浴槽には、同シリーズの200(フチ厚12〜20cm対応)があります。浴室での握りやすさに配慮した樹脂製のグリップが特徴です。
高さ調節付浴槽手すり UST-130N(安寿・在来工法用)。こちらは握る位置の高さを調節できるのが持ち味です。壁厚4.5〜13cmに3段階の幅調節で対応し、フチが厚い浴槽向けにはUST-200N(壁厚11.5〜20cm)があります。取り付けは「縁に段差のない浴槽」が条件で、小さな段差は付属の補正板で調整できます。同じ「130」でも湾曲への対応はメーカーごとに異なるため、フチが曲面の浴槽では両社の対応表を見比べてください。
ユニットバスに|脚で支える専用タイプ
入浴グリップ ユクリア ユニットバス専用コンパクト130脚付。エプロンのあるユニットバスに、脚とアジャスターで安定させて取り付ける専用タイプです。フチが厚い浴槽にはコンパクト200脚付、浴槽のフチ(壁)が低い浴室には脚の短いSタイプ(ショート)があります。
ユニットバス対応浴槽手すり UST-130UB(安寿)。同じくユニットバス対応のタイプで、メーカーは「床面に接した脚が浴槽への無理な荷重を抑制」する構造と説明しています。壁厚4.5〜13cm・厚み差3cm以内などの条件があり、湾曲の大きい浴槽には取り付けできません。どちらが自宅の浴槽に合うかは、フチの厚み・湾曲・エプロンの形で変わるため、対応表と自宅の実測値を突き合わせて選びます。
手すりが付かないときは、住宅改修という選択
フチの厚みや形状が合わず、浴槽用手すりが付かない——そんなときの第一の代替案が、壁に固定する手すり(住宅改修)です。
🕵️ TOCHIの現場メモ:売り場で浴槽グリップが付かなかった場合、実務でよくご案内していたのが住宅改修のL型手すりでした。L型に付けると、体が立位のまま・前傾姿勢にならずにまたげるので、足が上がりやすいのです。
壁の手すりは浴槽の形に左右されないため、「浴槽に付かない問題」そのものが起きません。浴槽用手すりのようにフチの厚みを気にする必要がなく、ステンレス浴槽でもユニットバスでも選べる道です。取り付ける位置は、体の使い方と浴室の構造をみて施工業者や専門職が決めます。
工事を伴うぶん手すり単体の購入より手順は増えますが、介護保険の住宅改修制度の対象になる工事なので、ケアマネジャーに相談するところから始めてください。「浴槽グリップが付かなかったから諦める」のではなく、道具の道と工事の道の両方を並べて考えるのが、遠回りしないコツです。
賃貸などで工事が難しい場合の吸盤式手すりは、詳しくは工事不要の浴室手すり「クイックバー」|サイズ選びと注意点を17年のプロが解説にまとめています。
座ってまたぐ人のバスボード
座ってまたぐ人向け(商品2点)
立ってまたぐことに不安がある方の道が、バスボードです。浴槽の上に板を渡し、そこに腰を掛けて、足を片方ずつ浴槽に入れる——立ってまたぐ動作そのものをなくす道具です。座ったまま体の向きを変えて足を運ぶので、またぎの間ずっとお尻で体重を支えられます。
バスボード U-S/U-L(安寿)。標準タイプのバスボードです。座面に腰掛けて足を運んだら、ボードを介助者が外してから湯に浸かります。ここが標準タイプの注意点で、外す人がいる前提の道具になります。対応する浴槽の内寸はU-Sが50〜63cm、U-Lが55〜68cmで、フチの幅が2.5cm以上あることも条件です。
バスボード はねあげくん H-S/H-L(安寿)。標準タイプの「外さないと浸かれない」を解決したのがこの形で、座面がはね上がるため、ボードを外さずにそのまま湯に浸かれます。メーカーはこの構造を「自立入浴から介助入浴まで幅広い方の入浴をサポート」する位置づけとして案内しています。対応する浴槽の内幅はH-Sが56〜69cm、H-Lが62〜75cmです。
サイズ(S/L)は、浴槽の内寸で選びます。フチの外側ではなく、内側の幅を測るのがポイントです。
内寸は、浴槽の内側の壁から壁までをメジャーで測ります。上のほうと底のほうで幅が変わる浴槽もあるので、ボードが載る位置——フチに近い高さで測るのが確実です。S・Lの対応範囲は製品ごとに決まっているので、測った数値がどちらの範囲に入るかで選びます。
🕵️ TOCHIの現場メモ:サイズ合わせは、私たちプロは現物を持参して、その場で取り付けてみて確かめていました。ネットで買う場合はそれができないので、内寸をきっちり測るしかありません。測った数値と製品の対応範囲を、購入前に必ず突き合わせてください。
⚠️ 設置条件の確認
バスボードも浴槽用手すりも、取扱説明書に取り付けできる浴槽の条件が定められています。フチが傾斜している浴槽など、条件から外れる浴槽には使用しないでください。取り付けが不安定なまま体重をかけると、本体が動くことがあります。
浴槽に入ったあとの立ち上がりには浴槽台という道具があります。詳しくは浴槽台の選び方|立ちやすい高さと肩まで浸かれる高さは違うにまとめています。また、浴槽の中は滑りやすいので、浴槽内用の滑り止めマットもあわせて確認してください。
まとめ
浴槽のまたぎを助ける道は、立ってまたぐ浴槽用手すりと、座ってまたぐバスボードの2つ。そして手すりが付くかどうかは、体ではなく浴槽のフチの厚みと形で決まります。測るのは浴槽、見極めるのは動作——数字は自分で測れますが、またげるかどうかの判断は専門職と一緒に。付かないときは、住宅改修のL型手すりという道もあります。

🔍 調査結果カード|浴槽用手すりとバスボードの選び方
またぎの補助は「立ってまたぐか・座ってまたぐか」で道が分かれます。手すりが付くかは浴槽のフチの厚みで決まるので、商品より先にフチを測る。付かなければ住宅改修という道もある——選択肢を広く持つのが失敗しないコツです。
なお、浴槽の中での立ち上がりには浴槽台、床の滑りにはマットと、入浴の困りごとには動作ごとの道具があります。またぎだけで解決しないときは、総論の役割マップに戻って、どの動作の困りごとかを整理し直してみてください。




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