

📌 この記事で分かること
- 入浴用品は、商品からではなくお風呂の入り方と動作から選ぶと迷わない
- 洗う・またぐ・浴槽内で立つ——動作ごとに対応する用具がある
- 入浴用品の多くは介護保険で購入できる(対象外のものもある)
まず、お風呂のどの動作で困っているか
入浴用品を選ぶ前に、ひとつだけ整理しておきたいことがあります。それは「お風呂のどの動作で困っているか」です。お風呂は、実はたくさんの動作の連続でできています。洗い場で体を洗う。浴槽へ近づく。縁をまたぐ。浴槽の中で腰を下ろし、浸かって、立ち上がる。そして出る。困りごとは、このどこかの動作で起きています。
たとえば「お風呂がつらくなってきた」という同じ言葉でも、洗うときの立ち座りがつらいのか、またぐのがこわいのか、浴槽の中で立てないのか——中身はそれぞれ別の困りごとです。そして、それぞれに別の道具が用意されています。
そして入浴用品は、それぞれの動作を助けるための道具として作られています。座って洗うのを助ける椅子。またぐのを助けるグリップやボード。浴槽の中で立ち上がるのを助ける台。だから、動作が特定できれば、見るべき道具は自然に絞られます。逆に、動作を特定しないまま商品を見比べ始めると、どれも良さそうに見えて選べなくなります。

もうひとつ、動作の前に分かれる大きな道があります。シャワー浴で済ませるのか、浴槽に浸かって温まりたいのかです。シャワー浴が中心なら、椅子まわりを整えることが中心になります。浴槽に浸かりたいなら、またぐ・浴槽内で立つという動作への備えが加わります。どちらの入り方をしたいかで、必要な道具の範囲が変わります。本人が「浸かりたい」のか「シャワーで十分」なのか——ここは道具では決められない、本人の希望を聞くところです。
🕵️ TOCHIの現場メモ:売り場では、入浴用品のご相談はまず「どうやってお風呂に入りたいか」から伺っていました。シャワーで済ませたいのか、浴槽に浸かって温まりたいのか。ここが分かれ道で、そのあとの道具選びが変わってきます。商品名から入るご相談でも、結局この質問に戻ってから選び直すことがほとんどでした。
介護保険で買えるもの・買えないもの
動作の地図が持てたところで、お金の話を先に整理しておきます。入浴用品の多くは、介護保険の特定福祉用具販売の対象です。介護保険の福祉用具にはレンタル(貸与)と購入(販売)の2つの形がありますが、入浴用品は肌に直接触れる用具のため、レンタルではなく購入の形で保険が使えます。
対象になる入浴補助用具は7種類——入浴用いす(シャワーチェア)・浴槽用手すり(浴槽グリップ)・浴槽内いす・入浴台(バスボード)・浴室内すのこ・浴槽内すのこ・入浴用介助ベルトです。ほかに簡易浴槽も販売種目に含まれます。第3章でみていく用具のほとんどが、この7種類のどれかに当たります。
仕組みは償還払い(いったん全額を支払い、あとから保険分が戻る)で、上限は年間10万円(4月から翌3月)。都道府県指定の事業者での購入が条件で、ホームセンターなどでの購入は対象外です。同じ商品でも、どこで買うかによって保険が使えるかどうかが変わる——ここは知らないと損をしやすいところです。地域によっては、最初から自己負担分だけ支払う受領委任払いを使える場合もあります(地域により異なります)。
一方、浴室の滑り止めマットは介護保険の対象外で、自費での購入になります。「入浴用品はぜんぶ保険で買える」わけではない——対象と対象外の線があることだけ、ここで覚えておいてください。対象かどうか・手続きの流れは、担当のケアマネジャーや福祉用具専門相談員に確認してください。
🕵️ TOCHIの現場メモ:入浴用品を求めて来られるお客様には、2つの経路がありました。ケアマネジャー経由でいらっしゃる方は状況が整理済みのことが多く、直接来店の方には、まず介護保険の認定があるかを伺っていました。認定があれば保険での購入をご説明し、なければ加入状況の確認や自費での購入をご案内する——入り口はいつもここからでした。
動作ごとに見る、入浴用品の役割マップ
ここからが、この記事の本体です。第1章の動作の一本道に沿って、それぞれの用具の役割・選ぶ軸・機能の裏表をみていきます。

座って洗う|シャワーチェア
洗い場での立ち座りや、立ったまま洗うのがつらくなってきたときの椅子です。ふつうの風呂椅子より座面が高く、立ち座りの負担を減らせるように作られています。選ぶ軸は背もたれ・肘掛けの有無、高さ調整、浴室の広さの4つです。
ここで知っておきたい裏表があります——肘掛けや背もたれは立ち座りを助けてくれますが、そのぶん体を洗うときには腕や背中まわりが洗いにくくなります。支えの多い椅子ほど洗いやすさが下がる、という関係です。また、機能が付くほど椅子は大きくなるので、浴室の広さとの釣り合いも見ます。「立ち座りの支え」と「洗いやすさ」——どちらをどれだけ取るかで選ぶ道具です。詳しくは介護用シャワーチェアの選び方|失敗しない4つのステップにまとめています。
🕵️ TOCHIの現場メモ:入浴用品の販売は、9割が介護保険での購入でした。その中でもシャワーチェアが7〜8割と、圧倒的な主力です。それだけ「洗うときの座り」に困る方が多い、ということでもあります。
浴槽をまたぐ|浴槽グリップ・バスボード
浴槽の縁をまたぐのが不安になってきたときの道具は、またぎ方によって分かれます。立ったまままたぐなら、つかまるものを用意する。座ったまままたぐなら、腰掛けられる場所を作る——この2方向です。
浴槽グリップは、浴槽の縁に挟み込んで固定するつかまり手で、立ってまたぐのを支えます。介護保険の購入対象です。ただし——浴槽のタイプによっては取り付けられないことがあります。縁の形や厚みが合わないと挟み込めないためで、売り場でも、実際には取り付けられずに選ばれないケースが少なくありませんでした。
バスボードは、浴槽の上に渡して座ったまままたぐための板で、こちらも保険の購入対象です。縁に腰を掛けて、足を片方ずつ入れる——立ってまたぐ動作そのものをなくす道具です。立ってまたぐことに不安があるなら、最初からバスボードも候補に入れて考えると選びやすくなります。壁に固定する手すりでまたぎを支える方法もあります(後述のとおり住宅改修の領域です)。詳しくは浴槽用手すりとバスボードの選び方|ユニットバスに付くかはフチの厚みで決まるにまとめています。
浴槽の中で立ち上がる|浴槽台
浴槽の中で腰を下ろすと立ち上がりにくい——そんなときに浴槽の中に沈めて使う台です。座る位置が高くなることで、立ち上がるときの負担が減ります。浴槽への出入りの踏み台を兼ねることもあります。
選ぶ軸は浴槽の大きさに合うか(コンパクト/普通)と台座の種類(普通/ソフト)。そしてここにも裏表があります。台の上に座ると立ち上がりはしやすくなりますが、そのぶん体の位置が高くなり、肩までお湯に浸かれなくなります。肩まで浸かって温まりたい方には向かない場合がある——「立ちやすさ」と「浸かる深さ」のどちらを取るか、ここを知ったうえで選びます。詳しくは浴槽台の選び方|立ちやすい高さと肩まで浸かれる高さは違うにまとめています。
滑りを防ぐ|滑り止めマット
浴槽の中や洗い場の床に敷くマットです。介護保険の対象外なので自費での購入になりますが、そのぶん手に取りやすい道具でもあります。選び方はお風呂の滑り止めマットおすすめ3選で詳しく解説しています。
壁につかまる|手すり
壁に固定する手すりは、またぐとき・立ち座りのときのつかまり先として選ばれる方法ですが、工事を伴うため、福祉用具の購入ではなく住宅改修の領域になります(将来、別の記事で扱う予定です)。工事をせずに設置できる吸盤式の手すりについては、工事不要の浴室手すり「クイックバー」で解説しています。
そのほかの用具
浴室のすのこは、洗い場の段差を埋める道具で制度の対象ですが、実際に利用するケースは多くありません。段差で困っている場合は、まず段差の原因に合った方法を専門職と確認するのが先です。
ロングスポンジは、背中や足先など自分で洗いにくいところに届く柄付きのスポンジで、洗う動作を自分で続けたい方の道具です。道具ひとつで「自分で洗える範囲」が保てることがあります。このほか、入浴用介助ベルトや簡易浴槽も制度の対象ですが、一般の家庭で利用する頻度は高くありません。
こうして並べると分かるとおり、入浴用品は「どれが一番良いか」を競う道具ではありません。動作ごとに役割が分かれていて、困っている動作に合うものを選ぶ——それがこの地図の使い方です。
買う前に確かめたいこと
入浴用品は、介護保険で買えるものが多いぶん、「とりあえず買う」で進みやすい道具でもあります。だからこそ、買う前に確かめたいことを挙げておきます。
①浴槽グリップは、自宅の浴槽に付くかを先に確認する。ユニットバスか、ステンレス浴槽か、縁の厚みはどのくらいか——浴槽のタイプによっては取り付けられません。商品を選んでから付かないと分かるより、先に浴槽を確認しておくほうが確実です。
②機能の裏表を知って選ぶ。肘掛け・背もたれは立ち座りを助けるけれど洗いにくくなる。浴槽台は立ちやすくなるけれど肩まで浸かれない。入浴用品の機能には、こうした裏表がつきものです。「何が良くなるか」と同時に「何が変わるか」まで見て選びます。
③価格だけで選ばない。量販店にも入浴用品は並んでいますが、価格だけで選ぶと、浴室の広さや浴槽のタイプ、本人の体格に合わないことがあります。合わない道具は結局使われなくなり、置き場所だけが残ります。しかも第2章のとおり、指定事業者以外での購入には介護保険が使えません。「どこで買うか」も含めて、先に確認してから動くのが結局いちばんの近道です。
④迷ったら、浴室の寸法を見てもらう。浴室の広さ・浴槽の形・段差——これらは家ごとに違います。入浴用品は「本人に合うか」と「浴室に合うか」の両方がそろって初めて使える道具なので、専門職に浴室を実際に見てもらえば、合う道具の候補は一気に絞れます。
🕵️ TOCHIの現場メモ:お客様やご家族は、メーカーで選ぶ方はほとんどいらっしゃいませんでした。皆さん機能で選びます。だからこそ、機能の裏表まで含めてご説明することが、売り場の仕事でした。
🟩 TOCHIの判断ポイント|購入前のチェックポイント
まず見る:困っている動作はどれか。浴室の広さ・浴槽のタイプ(ユニットバスか、縁の厚みなど)はどうか
なぜ:入浴用品は動作ごとに役割が分かれ、同じ用具でも浴室の環境や本人の体格によって合う・合わないが変わるため
どうする:困っている動作と浴室の状況をケアマネジャーや福祉用具専門相談員に伝え、介護保険が使えるかの確認も含めて、購入前に相談する
迷ったら、商品ではなく「今どの動作が一番困っているか」を整理すると、必要な用具が見つけやすくなります。
まとめ
入浴用品は、商品から選ぶと迷います。入り口は「どう入りたいか」と「どの動作で困っているか」。シャワー浴ならシャワーチェア、またぐのが不安なら浴槽グリップやバスボード、浴槽の中で立ちにくいなら浴槽台——動作が決まれば、道具は自然に絞れます。そして多くは介護保険で購入できます。機能の裏表と浴室との相性を確かめて、必要なら専門職に浴室を見てもらう。順番に確かめていきましょう。

🔍 調査結果カード|入浴用品の選び方 4ステップ
- 介護保険が使えるか確認する
- どんな入り方をしたいか考える
- 動作ごとに必要な用具を選ぶ
- 迷ったら専門職へ相談する
なお、お風呂の困りごとは浴室の中だけとは限りません。脱衣所や廊下からの移動に不安がある場合は、杖や歩行器など歩行の支えから整える道もあります。歩く道具の選び方は杖・シルバーカー・歩行器の選び方(総論)にまとめています。




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