先日の「介護靴の名前の書き方」の記事を読んで、さっそく親御さんの靴にお名前を書いてくださったご家族——本当にお疲れさまでした。あの一手間は、施設での持ち物管理をぐっとラクにしてくれます。
ただ、名前を書いたあとに、こんな声をよくいただきます。「名前は書いたけれど、本当に間違えられないかな?」と。


せっかく親御さんのために選んだ一足ですから、できる限りなくさずに、長く気持ちよく履いてあげたいですよね。実は、デイサービスの玄関は「同じような靴がずらりと並ぶ場所」。だからこそ、名前にもう一工夫を足すと、間違いを防ぎやすくなります。
この記事では、福祉用具の現場で17年お手伝いしてきた経験から、施設の運用を理解したスマートな目印の付け方とグッズ選びをお伝えします。これは難しい医療の話ではなく、「たくさんの人が集まる場所での、ちょっとした持ち物管理の工夫」のお話です。どうぞ気楽に読んでみてください。
🔎 まず結論:履き間違い・紛失を防ぐ3ステップ早見表
①名前を書く:基本のお手入れ(→ 書き方の記事)
②立体的な目印を足す:シューズタグ/お名前スタンプ/左右まとめクリップ
③明るい色・柄を選ぶ:買い替え時のいちばんの対策
ポイント:職員さんの視線が集まる「かかと・ベルトの端」に目印を置くと見分けやすい
なぜデイサービスで介護靴の「履き間違い」が起こりやすいのか?
最初にお伝えしたいのは、これは施設や職員さんの不注意ではない、ということです。むしろ構造上・環境上、どうしても起こりやすい事情があります。そこを知っておくと、ご家族の対策もぐっと的確になります。
理由1:デザインやカラーが酷似している(同じ靴だらけ問題)
介護シューズには、長く愛されている定番ブランドがあります。「あゆみ」や「快歩主義」といった人気モデルは、多くのご家庭で選ばれています。
そして色も、黒・茶色・グレー・紺といった落ち着いた定番カラーに人気が集まりがちです。汚れが目立ちにくいので、ご家族が選ぶ理由もよく分かります。
ただ、その結果として——デイサービスの玄関には、よく似たデザイン・よく似た色の靴が、何足も並ぶことになります。パッと見ただけでは「どれがうちの靴か」を見分けるのが難しい環境なのです。これは、靴を選んだご家庭が悪いわけでも、施設が悪いわけでもありません。みんなが良いものを選んだ結果、自然と起こることなのです。

理由2:お迎え・お見送り時の玄関の賑やかさ
もう一つが、時間帯の事情です。特に夕方の帰宅時間。限られた玄関スペースに、たくさんの利用者様が同時に集まります。職員さんは、その賑やかな中をしゃがみ込み、足元を見ながら、一人ひとりの靴を怒涛の勢いで準備していきます。
このとき、職員さんの視線が集中しているのは、靴の「かかと」や「マジックベルトの端」です。スムーズに履いていただくため、自然とその位置を見ながら手が動きます。
つまり、靴のつま先や内側に小さく手書きした名前は、この忙しい時間帯には視界に入りにくい——という事情があります。職員さんがどれだけ気を配っても、見落としが生じやすい環境がある、ということです。


職員さんもパッと見で見分けられる!おすすめの「目印」グッズ
ここからが本題です。ポイントは、職員さんの視線が集中する場所に、立体的で目立つ目印を足すこと。職員さんの負担を減らしながら、我が家の靴を見分けやすくする工夫を3つご紹介します。
① シューズタグ(ネームタグ)で靴を一目で識別
まずおすすめしたいのが、シューズタグ(ネームタグ)です。多くの介護靴には、かかと部分に「引っ張る輪っか(プルストラップ)」が付いています。ここにシリコンゴムやリングでタグを留めると、ちょうど職員さんがしゃがんで見る視線の高さに、目印が来ます。いわば特等席です。
色や形で「うちはこのタグ」と決めておけば、文字を読まなくても瞬時に見分けやすくなります。職員さんも「あ、〇色のタグのお宅ね」とすぐ気づけるので、お互いに安心です。
実際に、「目立つ色のタグに変えてから、靴を取り違えられることがほとんどなくなりました」と話してくださったご家族もいらっしゃいました。文字を読む手間が省ける分、見分けるスピードが上がるのだと思います。小さなタグひとつですが、忙しい玄関では大きな違いになります。まずはどんな色や形のタグがあるか、一度のぞいてみると、親御さんの靴に合うものを選びやすくなります。

施設で同じような靴が多い場合は、まず目印グッズから試すと負担が少ないです。どんな色や形があるか、必要に応じて確認してみてください。
🛒 Amazonで「大人用 シューズタグ」を見る 🛒 Amazonで「ネームリボン 靴用」を探す② ベルトの端などに押せる「お名前スタンプ」
手書きの名前は、洗濯や毎日の使用で少しずつ薄れたり、にじんで読みづらくなったりすることがあります。そこで便利なのが、防水・油性タイプのお名前スタンプです。職員さんの視線が集まるベルトの端などに、均一でくっきりした文字を押しておけます。手書きのように書く人によって読みやすさが変わることもなく、視認性を保ちやすいのが利点です。
何足も用意するご家庭なら、一度作っておくと毎回同じ品質で押せるので重宝します。お名前スタンプにもいろいろな種類があります。手書きが薄れてきて困っている場合は、スタンプも選択肢のひとつです。
🛒 Amazonで「おなまえスタンプ」を見る③ 靴箱の中でバラバラにならない「シューズクリップ(靴まとめ)」
現場で意外と多いのが、「片方だけが靴箱の奥に紛れ込んでしまう」という紛失パターンです。左右がバラバラになると、職員さんも探すのに苦労しますし、見つかるまで時間がかかってしまいます。
これを物理的に防ぎやすくしてくれるのが、左右をパチンとまとめられるシューズクリップ(靴まとめフック)です。脱いだ靴を一組にまとめておけば、靴箱の中で離れ離れになりにくくなります。
小さな道具ですが、「片方だけ行方不明」を防ぐ運用の知恵として、現場目線でおすすめできます。
片方だけ紛失しがちな場合は、左右をまとめる道具が役立ちます。種類が豊富なので、使いやすそうなものを一度見てみると、イメージがわきやすいですよ。
🛒 Amazonで「シューズクリップ」を探す購入前に家族ができる最大の紛失対策は「色・柄選び」
ここまでは「今ある靴」への目印の足し方でした。実は、新調・買い替えのタイミングこそ、いちばん効果的な対策ができる場面です。
他の方と被りにくいカラー(パステル系や明るい色)を選ぶ
先ほどお話しした通り、汚れを気にして黒や紺などの暗い色を選びがちです。でも、あえて視点を変えてみてください。ワインレッド、ラベンダー、ベージュ、ミントグリーンといった明るい色を選ぶと、定番カラーが並ぶ玄関の中で、はっきりとした目印になります。他の方と被りにくく、職員さんもご本人も「あの明るい色のお宅」とすぐ見分けやすくなります。
あえて柄物(チェック柄や織り模様)を選択肢に入れる
色だけでなく、柄物を候補に入れるのも一つの手です。ベルトの一部にチェック柄が入ったものや、織り模様のあるモデルなら、無地の靴の中でひときわ目立ちます。ご本人にとっても「私の靴はこの柄」と覚えやすく、おしゃれを楽しむきっかけにもなります。足元が華やぐと、出かける気持ちも少し明るくなるものです。
以前、長く黒い靴を選んでこられたお宅に、思いきって明るいベージュをご提案したことがあります。後日、「玄関ですぐ見つかるようになっただけでなく、本人が気に入って、出かけるのを楽しみにするようになった」と嬉しいご報告をいただきました。色選びは、目印としての役割と、気持ちを明るくする役割の、両方を兼ねてくれます。

デイサービスでの靴の管理で家族が知っておきたい「足数」の目安
最後に、もう一歩先の備えのお話です。
万が一の履き間違いや、洗い替えを見据えた運用
どれだけ丁寧に対策をしても、他の方がうっかり間違えて履いて帰ってしまう可能性は、ゼロにはなりません。また、雨の日に濡れて乾かない、汚れて洗い替えが必要、といったことも日常的に起こります。
このとき、靴が1足しかないと、翌日の外出やデイの利用に支障が出てしまいます。そこで、色違いや別モデルを含めた「2足体制(ローテーション運用)」を整えておくと、ぐっと安心です。1足が手元にない日でも、もう1足でいつも通り過ごせます。靴が何足あると安心かについては、洗い替えの考え方とあわせて、別の記事でくわしくお伝えする予定です。
【ワンポイント】親の靴が見当たらなくなったときの施設への伝え方
波風を立てずに一緒に探してもらうためのコミュニケーション
もし靴が見当たらないとき、感情的に「無くされた」と伝えてしまうと、お互いに気まずくなってしまいます。夕方の慌ただしさに理解を示しつつ、具体的な特徴を添えて協力をお願いするのがおすすめです。
たとえば、「うちの靴はかかとに〇色のタグをつけているのですが、お手数ですが靴箱の奥なども一緒に確認していただけますか?」と伝えると、職員さんも快く探しやすくなります。具体的な目印を共有しておくことが、良好な関係を保ちながらスムーズに解決する近道です。

まとめ:名前の書き方と合わせて足元を優しくサポート
デイサービスでの履き間違いや紛失は、「同じような靴が並ぶ環境」だからこそ起こりやすいもの。ご家庭でできる対策を、3つのステップに整理しておきます。
① 名前を書く(基本のお手入れ)
② 立体的な目印を足す(シューズタグ・スタンプ・クリップ)
③ 明るい色や柄物を選ぶ(買い替え時のいちばんの対策)
この3ステップを組み合わせれば、職員さんも見分けやすく、ご家族も安心して親御さんを送り出しやすくなります。完璧を目指さなくて大丈夫。できるところから一つずつで十分です。親御さんの足元を、優しくサポートしていきましょう。



✍️ この記事を書いた人
福祉グッズ探偵 TOCHI
- 福祉用具専門相談員
- 福祉用具プランナー
- 住環境コーディネーター2級
- おむつフィッター2級
福祉用具の現場で17年、のべ1万件以上のご相談に向き合ってきました。介護靴や歩行補助用品だけでなく、手すり・住まいの安全対策・排泄ケアまで、ご家庭で本当に役立つ福祉用具選びをお手伝いしてきました。
「親のために何を選べばいいか分からない」
そんなご家族の不安に寄り添い、カタログには載らない現場の本音を分かりやすくお伝えします。

