



🔎 まず確認:拒絶されたときの心構え早見表
考え方:「頑固」ではなく「不安」。足元の感覚が変わる怖さや、これまでの愛着が理由のことが多い。
声かけ:「履いて!」ではなく「私が心配だから、一度だけ試してくれたら安心できるな」と自分の気持ちで伝える。
慣らし方:いきなり外で履かせない。①玄関に数日並べる→②リビングで座って足を入れる→③短時間から。
避けたいこと:デイの迎えが来る直前に焦って履かせること。焦りは親御さんに伝わりやすい。
なぜ?新しい介護靴を「もったいない」と拒絶する親御さんの3つの心理
まずは、なぜ親御さんが新しい靴をそんなに嫌がるのか——その心の中をのぞいてみよう。理由がわかると、こちらの気持ちもずいぶんラクになるんだ。
① 「まだ履ける」物を大切にしてきた世代の価値観
今の高齢者世代の多くは、物の少ない時代を生き抜き、一つの物を大切に使い切ることが当たり前だった方々だ。繕いながら長く使う、簡単には捨てない——それは決して悪い習慣ではなく、その方が大切にしてきた立派な価値観なんだな。
だから「まだ履けるのに、もったいない」という言葉は、ある意味とても自然な反応さ。まずは「そうだよね、お母さんは物を大事にする人だもんね」と、その気持ちにいったん耳を傾けてあげる。否定から入らないことが、最初の一歩になることが多いんだ。
② 高齢者にとって「履き慣れた感覚が変わること」の不安
これは現場でとても多い相談なんだけれど、年齢を重ねてバランスを取る力が少しずつ変わってくると、靴底のわずかな硬さやクッション性の違いが、想像以上に大きく感じられることがある。
私たちにとっては「ちょっと新しくなっただけ」でも、ご本人にとっては「足元の感覚がいつもと違って、なんだか歩きにくい・ぐらつく気がして怖い」という不安に直結しやすいんだ。これは“わがまま”ではなく、足元の安心を守ろうとする自然な感覚。ここを理解してあげるだけで、見方が変わってくるよ。
③ 「これは私のじゃない」新しい変化への戸惑い
もうひとつ、見落とされやすいのが環境の変化そのものへの戸惑いだ。見慣れない新品が、いつもの玄関にぽつんと置いてあるだけで、日常のペースが乱されるような、落ち着かない気持ちになる方もいる。
「これは私の靴じゃない」という感覚は、本人にとってはとても繊細でリアルなもの。だからこそ、後で紹介するように“少しずつ景色に馴染ませていく”という工夫が効いてくることがあるんだな。
親御さんの不安に寄り添う「声かけ」とコミュニケーションの工夫
心理がわかったら、次は伝え方だ。ほんの少し言葉を変えるだけで、親御さんの受け取り方が大きく変わることがあるよ。
主語を「あなた(親)」から「わたし(子ども)」に変えて伝える
✕ つい言いがち(親の現状を否定する伝え方)
「その靴はもう寿命だから、これに変えて!危ないでしょ!」
◯ おすすめ(自分の気持ちを伝える=Iメッセージ)
「お母さんが歩くとき、私が心配なの。試しに一度だけ履いてみてくれたら、私が安心できるな」
前者は「あなたは間違っている」という否定として伝わりやすく、つい意地になってしまう。後者は「あなたが心配」というこちらの願いとして届くので、親御さんも受け止めやすいんだ。
靴を変えることが目的ではなく、「あなたのことが大切だよ」という気持ちを伝えることが本当の目的。そう考えると、言葉も自然とやわらかくなってくるよ。

日頃から信頼している専門職さんの言葉をそっと借りる
家族の間だと、どうしても甘えや意地が出てしまうことがある。「あなたに言われたくない」と、内容より関係性で反発してしまう——これも親子ならではだね。
そんなときは、第三者の客観的な視点をそっと借りるのが効くことがある。たとえば「デイサービスの職員さんが、この形なら今の足に馴染みやすいって教えてくれたよ」「担当の理学療法士さんや福祉用具専門相談員さんがすすめてたよ」という伝え方だ。
日頃から親御さんが信頼している専門職さんの言葉だと、すんなり受け入れられるケースがあるんだな。ポイントは「先生が」と曖昧にせず、誰の言葉かを具体的に伝えること。ご本人の安心につながりやすいよ。
焦らず少しずつ。新しい靴に慣れてもらうための現場の工夫
ここからは、現場で実際に相談を受けたときにお伝えすることがある“慣らし方”の工夫を紹介するよ。どれも「今日から完璧に」ではなく、スモールステップが基本だ。

① 足裏の感覚を変えすぎない工夫(古い中敷きの活用)
新しい靴を嫌がる理由が「足裏の感覚の違い」にある場合、ひとつの工夫として、今まで使っていた靴の中敷き(インソール)を、新しい靴に一時的に入れてみる方法がある。
履き慣れた中敷きだと、足裏がいつもの感覚に近くなり、「あれ、思ったより違和感がないな」と安心してもらえることがあるんだ。慣れてきたら、少しずつ新しい中敷きに戻していけばいい。※中敷きのサイズや形が合うかは、無理のない範囲で確認してね。
② 玄関の風景にあらかじめ馴染ませておく
「これは私の靴じゃない」という戸惑いには、“なじませ期間”をつくるのが効くことがある。いきなり「今日から履いて」ではなく、まずは数日間、新しい靴を玄関にそっと並べておくんだ。
毎日目にするうちに、だんだん「見慣れた景色」の一部になっていく。視覚的に馴染んでから「そろそろ履いてみる?」と声をかけると、心のハードルがぐっと下がっていることがあるよ。
③ まずは「自宅のリビング」で座ったまま足を入れてみる
いきなり外を歩くのは、不安が大きい。だからまずは、一番安心できる自宅のリビングで、椅子に座ったまま足を入れてみるところから。
マジックテープをペタペタ留めてみたり、足先を動かしてみたり。「歩かなくていいから、ちょっと足を入れるだけ」と伝えると、ご本人も身構えずに試しやすい。座った状態なら転倒の心配も少なく、お互いに穏やかな気持ちで向き合えるんだな。
④ 【番外編】「デイサービスの出発直前」のタイミングは避ける
これは“やりがちな失敗”として、ぜひ知っておいてほしい。家族が一番焦って無理に履かせようとするのが、デイサービスの迎えが来る直前なんだ。
「もう来ちゃう、早く履いて!」という焦りは、そのまま親御さんに伝わってしまう。すると、ますます身構えて拒絶につながりやすい。試すなら、前日の夕方など、お互いの心に余裕がある穏やかな時間を選んであげてほしいな。
⑤ 出かけるタイミングで、職員さんから声をかけてもらう
家族が言うと反発してしまう場合でも、デイサービスの出発時に職員さんから「素敵な靴ですね、今日はこれで行きましょうか」と促されると、素直に受け入れられる——そんなケースもよくある。
「家族には意地を張っても、外の人にはいい顔をしたい」というのは、人として自然な心理だね。事前に職員さんへ「新しい靴に慣れてもらいたい」と相談しておくと、さりげなく後押ししてもらえることがあるよ。
もしかして「靴の構造」自体が負担になっているサインかも?
ここまでは心理や声かけの話をしてきたけれど、もうひとつ大切な視点がある。それは、そもそも靴そのものが、ご本人にとって履きにくい・つらいのかもしれない、ということだ。言葉でうまく説明できないだけ、というケースは少なくないんだ。
足のむくみや変形で「履くときに痛みがある」可能性
「嫌だ」の裏に、履くときの圧迫感や痛みが隠れていることがある。足のむくみや外反母趾などで足の幅が変わっているのに、ワイズ(足囲)が合っていないと、窮屈で痛い思いをしているかもしれない。
足囲のことはワイズ完全ガイドで、むくみや変形のある足の靴選びは足がむくむ・外反母趾の高齢者の靴選びで詳しく解説しているよ。
もし窮屈さを嫌がっているようなら、素材自体がやわらかく伸縮して足に馴染みやすいダブルマジックⅢのようなモデルに目を向けてみるのもひとつの方法だ。詳しくはダブルマジックⅢのレビューも参考にしてみてね。
AmazonでダブルマジックⅢを見る履き口の開き方が狭く、着脱に引っかかりを感じているケース
もうひとつ多いのが、着脱のしにくさだ。履き口が狭くて足が入れづらかったり、ベロ(甲の部分)が倒れて引っかかったりすると、ご本人が「扱いにくい」と感じて、それが拒否感につながっていることがある。
手や足元を思うように動かしにくい方ほど、この「履くときの引っかかり」をストレスに感じやすい。
そんなときは、ベロが勝手に起き上がって足を入れやすい構造の瞬感スポッとのように、「これならラクに履ける」と本人が思える靴へ見直すのが近道かもしれない。使用感は瞬感スポッとのレビューにまとめているよ。
Amazonで瞬感スポッとを見る🔎 迷ったら、親が嫌がりにくい候補2足
新しい靴を嫌がる場合は、いきなり大きく形を変えるよりも、今までの履き心地に近いものや、脱ぎ履きの負担が少ないものから試すと、受け入れてもらいやすいことがあります。親御さんの性格や生活場面に合わせて、無理のない候補から確認してみてください。
まとめ|焦らなくて大丈夫。親子でゆっくり、足元の安心を広げていきましょう
新しい靴を用意してあげたこと——それ自体が、親御さんを想うとても優しい一歩だ。だからこそ、拒絶されて悲しくなったり、イライラしてしまったりするのは、当然のことなんだよ。
でも、「今日明日のうちに何としても履かせなきゃ」と、あなた自身を追い詰める必要はまったくない。拒絶の裏には足元の不安や愛着があると知るだけで、見方はずいぶん変わる。まずは玄関に置いて眺めてもらうだけでも、立派な一歩前進なんだ。
親御さんのペースに付き合いながら、お互いの心が穏やかでいられる着地点を、ゆっくり見つけていこう。あなたの優しさは、ちゃんと伝わっているからね。

🔎 福祉グッズ探偵事務所・調査報告
【今回の案件:新しい介護靴を嫌がる親御さんへのアプローチ】
- ① 拒絶の理由:頑固だからではなく、足元の感覚が変わる「不安」や、これまでの愛着が理由の傾向があります。
- ② 声かけのコツ:「私が心配だから」「職員さんのおすすめだから」と、伝え方を少し工夫してみるのがおすすめです。
- ③ 慣らし方の工夫:古いインソールの活用や、玄関にあらかじめ並べておく「なじませ期間」が心のハードルを下げることがあります。
探偵からのひとこと:せっかく選んだ靴を拒絶されると、悲しくなってしまうのは当然です。でも、あなたの優しさはしっかり届いています。焦る必要はまったくありません。まずはリビングで足を乗せてみるくらいの手軽さで、親子でゆっくり新しい靴を馴染ませていきましょう。



✍️ この記事を書いた人
福祉グッズ探偵 TOCHI
- 福祉用具専門相談員
- 福祉用具プランナー
- 住環境コーディネーター2級
- おむつフィッター2級
福祉用具の現場で17年、のべ1万件以上のご相談に向き合ってきました。介護靴や歩行補助用品だけでなく、手すり・住まいの安全対策・排泄ケアまで、ご家庭で本当に役立つ福祉用具選びをお手伝いしてきました。
「親のために何を選べばいいか分からない」
そんなご家族の不安に寄り添い、カタログには載らない現場の本音を分かりやすくお伝えします。

